激しく鳴る心臓の音を聞きながら、ただ目の前の彼を見つめると。

その形の良い唇が、こう動いた。


「……キスシーンの練習でもしとく?」


──キスシーンの、練習!?

ってことはつまり、つまり…………えぇーー!!

何言ってるの、如月くん~~!?


「な……なっ……!」

「キスくらいは妄想してんじゃなかったっけ?」


淡々と聞いてくる彼に、回らない頭で必死に考える。

そういえば、保健室での一件があった時にそんなようなこと言った……かもしれないけど!


「妄想を本物にしてやろうか。キスは頭ん中だけでするもんじゃねぇだろ」


なぜそんな色っぽい声で、フェロモン全開してるんですかーーっ!?

どうしちゃったの? 如月くんも暑さでやられちゃった!?


これでもかってくらい目を見開き、口もぱかっと開けるけど、声が出てこない。

そんな私を、熱っぽい瞳で見つめていた彼は、少しだけ傾けた顔を近付ける。