「っふ、うぅ……」


やりきれなくて、溢れる涙が頬を伝った。

手の甲で拭っても、目に映る天井がすぐに歪んでしまう。

なんとか止めようとしていると、突然保健室のドアが開いた。


「菜乃ー、もう良くなった? ……って、なに泣いてんの!?」


驚いてこっちに駆け寄る文ちゃんを見たら、気持ちと一緒に涙腺も緩んでしまった。


「ふみちゃん~~……!」

「ど、どうしたの!?」


子供みたいに泣き付く私を、わけもわからないまま抱きしめてくれる文ちゃん。

彼女は私が落ち着くのを待って、じっくりとさっきの話を聞いてくれた。



ひとまず話し終えると、椅子に座る文ちゃんは腕を組んで言う。


「……じゃ、如月くんはあの時、琉依と一緒にいたのは菜乃だって気付いてたんだ?」


夏休み直前、私達は琉依くんから、『奏は菜乃ちゃんだって気付いてなかったから、“俺には関係ない”なんて言ったんだよ』と聞いていた。

でも、さっきの如月くんの言い方は、明らかに私だと気付いていた。


「うん……たぶん琉依くんは私に気を遣って、ああいうふうに言ってくれたんじゃないかな」