好きだからキスして何が悪い？

「えぇっ！？　何を突然……！」

「手繋いで歩いてりゃ当然そうなんだろ」

「あー、や、あの時はちょっと事情がありまして……」


しどろもどろになる彼女を、俺は冷ややかな目で見据えていた。

手を繋がなきゃいけない事情なんてモンがあるか？

あーイライラする。


「私、琉依くんのことは好きだよ。でも──」

「妄想ばっかのお前でも、ちゃんと恋愛できんだな」


琉依のことが好きだと聞いた瞬間、もう他の言葉はシャットアウトするようにそんなことを言っていた。

彼女は面食らったように目をしばたたかせる。


「……で、できますよそりゃ」

「キスも？　それ以上のこともできるわけ？」

「んなっ、なななな……！」


金魚みたいに、顔を真っ赤にして口をパクパクさせるナノは、なんとか言葉を絞り出す。


「やめてくださいよ！　キ、キスはまだしも、そそそれ以上のことって……！」

「へぇ、妄想女子でも頭ん中ではキス止まりなのか」

「だってそんな、なんか生々しくて恥ずかしいし……！」


顔を赤くしたまま縮こまる姿を見ていると、俺は黒い感情が湧いてくるのを自覚した。