好きだからキスして何が悪い?

「あのまま放っとくほど鬼じゃねぇって」


ぶっきらぼうに答えると、ナノはクスクスと笑う。

その笑顔に、また勝手に胸がトクンと鳴るもんだから、俺はすぐに目を逸らした。


「たしかに、最近ちょっとバテ気味だったかも。気をつけます」

「もう運んでやらねぇからな」

「ふふ、はい。でもだいぶ良くなった~……って、あれ? 髪が……」


ふいに、髪の毛が下ろされていることに気付いたナノが、不思議そうな顔をする。

俺はもちろん素知らぬふりだ。


「寝てる間に取れたんじゃねーの」

「そう、かな? 結構きつく結んでたけど……って眼鏡もない!」


今度はゆっくりと起き上がって、キョロキョロとあたりを見回す。

渡してやらなきゃな、と眼鏡に手を伸ばしたものの、ぴたりと動きを止めた。


「……お前さ」


振り向くと、大きな目が不思議そうに俺を見つめる。


「琉依のこと、好きなんだよな?」


聞かなくてもわかることだが、それでもちゃんとした確信を持ちたくて、俺の口は自然とそう動いていた。

ナノの瞳がさらに大きく見開かれる。