好きだからキスして何が悪い?

この綺麗な肌や、素直なことを言う唇、妄想ばっかりだけど純粋な心も。

全部琉依の……俺以外の男のモノになる。

そう考えた瞬間、“惜しい”と思うなんて──。


「俺も暑さでやられたか……?」


ぽつりと呟いて、赤みがひいてきた頬にそっと触れた。

すると、ピクリとまつげが動いてうっすら瞼が開く。

瞬きしながらゆっくりと開かれた瞳は、ぼんやりと無愛想な俺を映している。


「……あ、れ、如月くん……?」

「お前、やっぱりちゃんと飲み食いしてなかったんだろ。熱中症だってよ」

「……あぁっ!?」


一連のことを思い出したらしく、いきなり起き上がったナノは、顔を歪めて「いたたた……」と頭を抱える。


「バカ、寝てろ」

「う、ごめんなさい……」


再びベッドにぱたりと倒れた彼女。

俺はその額に手を伸ばす。


「でも、ちょっとは良くなったか」


さっきよりは熱くないことを手の平で確認すると、ナノは体温が下がったはずなのに頬を赤く染めていた。

手を離すと、彼女は柔らかな笑みを見せる。


「如月くんが運んでくれたんだよね……本当にありがとう」