好きだからキスして何が悪い?

規則正しい息遣いが、静かな保健室に響く。

しばらく彼女を眺めていて、ふと気付いた。

寝てる時にコレは邪魔だよな……。


腰を上げると、両手を伸ばしてそっと眼鏡を外す。

長いまつげが良く見え、あどけない寝顔が露わになると、さっき考えていたことを思い出した。

土曜日、琉依といたのはコイツだったのかという疑問を。


眼鏡を彼女のバッグの上に置くと、もう一度上から寝顔を覗き込む。

あの時は髪下ろしてたか……。


少し考えて、俺は彼女の三つ編みに手を伸ばす。

悪いと思いつつも、縛っているふたつのゴムをそっと外した。


「やっぱり……」


肩の下に流れるふわふわと波打つ髪は、あの時とは少し違うが、もう確信を持つことができた。


琉依と一緒にいたのはナノ。

しかも、手を繋いで。


『これからは、本当に好きなコとは慎重に付き合おうと思ってるから』


琉依のあの言葉が、もしナノとのことを言っているなら、まだ付き合っていないというのも頷ける。

でも、お互い想い合っていればそんなのは時間の問題だ。

コイツは、琉依のものになるのかも──。