好きだからキスして何が悪い?

そう自分に言い聞かせながら、とにかく急いで保健室へ向かう。


「気持ち悪かったら言えよ」

「うん、ありがと……」


腕の中で小さくなる猫みたいな彼女に、俺はまたむず痒くなりそうな胸をごまかし続けていた。



 *



保健の先生はいなかったが、代わりにいたバスケ部の顧問が様子を見に来てくれた。

やっぱり軽い熱中症らしく、しばらく身体を冷やして休ませることに。


ベッドに横たわるナノは、少し落ち着いたのか静かに寝息を立てている。

それに安堵すると、藍原はナノのバッグを誰もいないベッドの上に置き、俺の肩をぽんと叩く。


「じゃ、あたし図書室にいるから、菜乃が帰れそうだったら呼びに来て」

「は? おい……」

「あ、如月くんが送ってくれてもいいけどね~」


ニヤニヤと怪しい目をしながら、ささっと保健室を出ていく藍原。

何でコイツとふたりにするんだよ……。


まぁいいけど。冷房効いてて涼しいし。

手持ち無沙汰になった俺は眼鏡を外し、とりあえずナノが眠るベッドの横に椅子を持ってきて座った。