好きだからキスして何が悪い?

「……別に、いつもと一緒じゃね」


内心ドキリとしながらも、裏腹なことを平然と口にしていた。

“可愛かった”なんて、正直に言えるわけがない。

すると、藍原はムスッとしながら俺の眼鏡を指差す。


「アナタのそのぶ厚い眼鏡じゃわかんないのかなー」


わかってるよ、本当は。

なんとなくきまりが悪くなって、目を逸らしてしまう。


「この間は眼鏡かけてないにもかかわらず見間違えちゃったらしいけど」


独り言みたいなそれにピクリと反応して、再び藍原を見やった、その時。


──ガタンッ!

ドアの所で音がして振り向くと、制服姿の女子がドアにもたれ掛かりながらうずくまっている。


「菜乃っ!?」


藍原が叫び、俺達は同時に駆け出していた。


「どうしたの、大丈夫!?」

「……ちょっと、クラクラして……」


菜乃の肩に藍原が手を置くと、苦しげなほてった顔が見える。

熱中症か?


「ったく、世話の焼ける……」


ボソッと漏らした俺は、ナノの横にしゃがんで背中に手を回した。

力が抜けたように俺の胸に寄り掛かるナノは、うつろな瞳で見上げる。