好きだからキスして何が悪い?

たしかにラクだな、と思ったのもつかの間、野崎がニンマリしながらこんなことを言う。


「犯人が捕まって、ここが一番の見せ場だぞ~」


ヤツに動かされて、俺はナノが寝ている長机の前に立たされた。

これは、まさか。


「如月くんはゆっくり顔を近付けて。あ、でも早めに照明落として暗くするから安心して。キスするフリでいいからね、フリで!」


当たり前だろバカ!

と喉元まで出かかったが、なんとか堪えた。

周りからは冷やかしの声が上がり、最高に居心地が悪い。


ちらりと見下ろすと、緊張したようにどぎまぎするナノは、少し顔が赤くなっているように見える。

妄想女子にはたまんねー展開か……。


いろんな意味でげんなりしていると、彼女は突然眼鏡を少し持ち上げて目をこすりだす。

瞬きばっかしてるけど……なんだ、目にゴミでも入ったか?

一瞬気になったものの、野崎の指示は続く。


「『眼鏡姫は妄想が大好きだったな……。もしかしたら、マウストゥマウスで目を覚ますかもしれない!』ってナレーションが聞こえたら、照明を落としていくと同時に……」