好きだからキスして何が悪い?

「なんか元気ねぇな。休み前からそんな感じだったろ。ちゃんと飯食ってんのか?」


少し気になって、俺は皆がいる教室内だということも忘れて、普通に話し掛けていた。

すると、また目を開いて俺を見上げたナノは、今度は表情を緩め、微笑みながらゆっくり目を逸らす。


「大丈夫、食べてるよ。……心配してくれてありがとう」


はにかみながら言われて、また胸が揺れる感覚がした。

今日のコイツ、やっぱりいつもと違う。

なんだかしおらしくて、可愛く見えるような……


……って、どうした俺。

この妄想メガネクラ女子に何を思ってんだ?

なんだか軽く頭痛がしてきて、額に手をあてる俺を、ナノは品定めするように見上げながら言う。


「如月くんは、ハーモニカ吹いてる無口な旅人のキャラクターみたいでカッコいいよ」

「微妙なフォローすんな」


俺の返しにクスクスと笑う彼女はいつも通り。

元気がなさそうなのは、俺の気のせいだったか……。


もうあまり深くは考えないようにしようと決めると、準備が整ったらしく声がかかった。