密かに笑いを堪えていると、野崎が「このままちょっと流れだけでも確認してみる？」と言い、賛成した皆は大道具を準備し始める。

その間、俺とナノは隅に追いやられていた。


隣に来た彼女は、なぜか遠慮がちに黙って立っている。

そういえば、夏休みに入る少し前から話してないっけ。

もとからそんなに話すわけでもないが、なんだか向こうが意識的に目を合わさないようにしていた気がする。

そのことを思い出して、なんとなく話し掛けてみることにした。


「……お前、お遊戯会だな」


派手なドレスを見下ろしてボソッと呟くと、ナノは驚いたようにぱっと顔を上げた。

一瞬目が合うとすぐに視線を逸らした彼女は、顔を背けたまま力無い声で呟く。


「……わかってます、こんなお姫様の格好は似合わないって」


……なんだ？

予想していた反応と違って、俺はもう一度彼女を見下ろした。

いつもなら冷たい発言をしても、たいしてへこたれないくせに、何で今日はそんなに悲しそうにするんだよ。