わくわくした様子の女子から、目を丸くするナノがそれを受け取ると、今度は野崎が俺のもとへやってくる。


「はい、如月くんはこっち」


ニコニコしながら差し出されたのは、深紅の大きなポンチョらしきものと、白いふわふわした羽根がついた帽子。

案の定、俺は言葉を失った。


「旅人風にするつもりだから、制服の上にこれ羽織って帽子被るだけでOKなんだ! ラクでしょ?」

「…………」


旅人風の王子ってどんなだよ。

まぁ、やたらビラビラした、いかにもって衣装にされなくて助かったけど……。


仕方なく、そしてものすごく嫌々それを身につけ、どこかで着替えてきたナノが登場すると。


「あっはははは!! 二人とも似合う~」

「うんうん、超イイよ~!」


教室内は、皆が腹を抱えるほどの大爆笑に包まれた。


あー恥さらしだ。辱めだ。

やっぱり野崎のやつ一発殴ってやりてぇ。

今すぐ消えてなくなりたい気分ってのはこのことか。


爆笑の渦が巻き起こる中、大きなため息を吐き出しながらナノをちらりと見やる。

ドレス姿なのに、きっちり三つ編みと眼鏡は健在で、そのちぐはぐさはたしかに面白い。