若干身体を引きながら、怪訝な目で琉依を見返す。


「なに」

「あ、いや、なんでも! ……気付いてないってことは良かったのか? でも……うーん」


俺から目を逸らした琉依は、顎に手をあてて何やらぶつぶつ言っている。

そして、その格好のままこんなことを口にした。


「……あの子見て、どう思った?」


なんだそりゃ。

お前が付き合おうとしてるのに、俺の意見が必要か?

意味がわからなくて眉をひそめるが、とりあえず答える。


「どうって……まぁ、人並みに可愛いんじゃない」

「だよな? うん、やっぱり奏も可愛いと思うよな……」


小さく頷きながら難しい顔をする琉依は、やっぱり何かおかしい。

ますます眉間のシワを濃くして見ていると、ヤツは突然ぱっと顔をこっちに向けた。


「ゴメン、とりあえず今の話は全部なかったことにしよう!」

「はぁ?」

「あー暑いなほんっとにー! ちょっと僕は中戻るわ」

「おい」


スチャッと片手を上げ、わざとらしく見える明るさと笑顔で、琉依はドアの方へと向かう。

険しい顔のまま見送っていると、途中で足が止まった。