憎めないやつだからなのか、俺はどうしても彼女を邪険にすることが出来ない。


名前を呼ぶ時は、呼びやすいせいか何なのか、自然と“ナノ”と口にしてしまうし。

まぁ、これはもうあだ名同然だからいいとして。

誰にも言うつもりはなかった屋上のことも、アイツには教えちまったし。

はにかむような笑顔を時々見せられると、少し……ほんの少しだけ、心が揺らぐような感覚になったりもする。


……アイツ、もっと気合い入れてなんとかすれば、たぶん人並みに可愛い女子になると思うんだけど。

琉依もそれをわかっているから、最近よく付きまとってるんだろう。

あのアメリカ流のスキンシップはやり過ぎだけどな。

見ててイラッとすんだよ、あれ。


……って、何でナノのことばっか考えてんだ俺。

ありえない。あんな昭和臭い妄想女子に、思考を奪われるなんて。

どうでもいいんだよ、アイツのことは──。



無理やり頭の中から地味女の姿を消して勉強に打ち込み、テストは難なく乗り切った。

そして週明けの月曜日、下駄箱で靴を履き替えていると、同じタイミングで登校してきた琉依が俺のもとにやってくる。