なんとか期末試験も終わった7月の第二土曜日、午前十時半。

予定通り文ちゃんが私の家にやってきた。


「あ、文ちゃんだ!」

「美紅ちゃんおひさー」


冷凍庫からアイスを取り出した美紅が、リビングの前の廊下を通る文ちゃんに気付いて、表情をぱぁっと明るくする。

うぅ、こんなカオ、私には最近見せてくれたことがない……。ちょっとだけジェラシー。


「相変わらず美人ー。うちの原始人も進化させてやってよ」

「美紅は相変わらず失礼だね」


なんかもう怒る気にもならない。

ショートパンツからすらりとした素足を覗かせ、棒がついたアイスをペロリと舐める若々しい妹を据わった目で見ていると。

文ちゃんはぱちんとウインクして、こんなことを言う。


「まかせて。今日は菜乃の世界をぶち壊しにきたから」

「……はぃ?」

「さぁ行くよー」


私の腕を引っ張って、自分の家のように私の部屋へ向かう文ちゃん。

私の世界をぶち壊すってどういうこと?

わけもわからず部屋に入ると、私はクッションの上に座らされ、文ちゃんはバッグの中から何かを取り出し、ドンッとテーブルの上に置いた。