私はひとつため息を吐き出し、お弁当に目線を落としてのっそりと箸を動かす。


「キスシーンやるなんて、当然嫌に決まってるよね。しかも、相手はこんな私だし……」


もっと美人だったり可愛い女子ならまだしも、こんなメガネクラじゃねぇ……。

決してキスシーンをやりたいわけではないけど、如月くんに嫌がられるのはやっぱり切ない。


気分が下降してしまい、もそもそとご飯を食べる私に、琉依くんがこんなことを口にする。


「僕だったら全然ウェルカムなんだけどな」


えっ、と驚いて顔を上げると、文ちゃんが軽くあしらう。


「あんたは誰にでも出来るでしょ、そのアメリカナイズで」

「そうじゃなくても。だって……」


突然身体を近付けて、じっと私を見つめてくる琉依くんにドキッとする。

次の瞬間、彼の手が顔に伸びてきて、眼鏡をそっと外した。

目を丸くする私をまじまじと見た彼は、にこりと癒し系の笑みを浮かべる。


「ほら、菜乃ちゃん可愛いもん」


……思いもよらないフレーズに、一瞬思考が停止。

“可愛い”? 誰が?

………………わ、私!?