無表情の如月くんが、琉依くんの頬を片手で寄せるようにぶにゅっと掴む。

タコのような口で、琉依くんは渋々白状した。


「死んじゃった白雪姫は、王子様のキスで目を覚ましました……とさ。めでたしめでたし~」

「…………」


一時停止する如月くん。

そして琉依くんから手を離すと、表情を変えずに無言で眼鏡を掛け、ドアに向かって歩き始める。


「ど、どこ行くの!?」


思わずその背中に投げ掛けると、少しだけ振り返った彼はボソッと呟いた。


「……野崎をシメてくる」

「「ダメダメダメーー!!」」


三人で必死に止めた。

しかもまた野崎くんが犠牲に!

私達があわあわしていると、如月くんは呆れたような息を漏らす。


「冗談だよ。トイレ」


そう言って、彼は屋上を出ていってしまった。

残された私達は、微妙な空気に包まれる。


「まさか白雪姫を知らなかったなんてね」

「だからあっさり劇を受け入れたんだ……」


文ちゃんの言葉に小さく頷きながら、私は納得していた。

キスシーンがあるって知っていたら、如月くんじゃなくても抵抗するはずだもん。