まぁ、琉依くんは単純に気になって聞いているだけっぽいけど。

ひとりどぎまぎしていると、如月くんが気だるげにペットボトルのフタを開けながら言う。


「何だよ、名シーンって」

「そりゃもちろん、毒リンゴ食べて死んじゃった白雪姫に王子が……って、まさか奏……」


如月くんをじっと見据えて、「白雪姫の話、どんなのか知らない?」と琉依くんが問い掛けた。

すると、返ってきた答えは。


「知るわけねーだろ。そんな乙女っぽい話」

「「えぇぇーー!!」」


私達三人は揃って驚愕の声を上げた。

あんなに有名な童話を知らない人がいたなんて!


「白雪姫だよ? ちょっとも知らないの!?」

「全然」

「ありえないよ奏……乙女じゃなくても世の中の人だいたい知ってるから!」

「マジか」


文ちゃんと琉依くんに迫られる如月くんは、ちょっとだけ驚いている様子。

そんな彼は、一口お茶を飲んで言う。


「で、何なわけ? その名シーンとやらは」

「あ、あぁ、知らないならわざわざ言わなくても……」

「そう言われると余計知りたくなるに決まってんだろ。吐け」