「あ、そうそう。早く奏に会いたかったから聞き出しちゃった」

「まぁ、琉依ならいいけど……」


その言葉に、ホッと胸を撫で下ろした。

よかった、勝手に教えちゃったことお怒りにならなくて……。

早水くんはニコニコしながら、当然のように言う。


「だよねー僕達の仲だもんね♪ しばらくこっちにいるから、またよろしく。菜乃ちゃんもね」

「あ、はい!」


突然話を振られてびっくりしつつ、私も笑って返事をした。

フレンドリーな早水くんにほっこりするけど、私はこの場にいていいんだろうか……。

かと言って出ていくタイミングもわからず、どうしようかと考えていると。


「それにしても、本当に地味な格好してんだね。この眼鏡とかガリ勉くんみたい」


早水くんは如月くんが置いていた眼鏡を観察したり、実際に掛けたりしている。

そして、ぶ厚い眼鏡を掛けたガリ勉くんの姿のまま、彼はこんな意味深なことを口走った。


「あの頃の奏はどこに?って感じだな。すでに懐かしいよ」

「あの頃……?」


思わずそう繰り返して、不思議な顔をする私に気付いた早水くんもキョトンとする。