潤の顔が浮かぶ。
そして、気分の悪くなるようなあの男の顔……
葛原……
まさか……恭と葛原が顔を合わせる……?
「茉弘?」
百合さんが心配そうにあたしの顔を覗き込む。
だめだ。
ちゃんと平常心を保たなきゃ。
「あっと……ごめん。いや、何かさ、怖いなって思ってね。あたし達を陥れようとしている人達と顔を会わせなきゃいけないなんて。
喧嘩になったりしないのかな?」
「それは大丈夫みたいよ。
何かルールがあるんだって。大暴走の間はどんなに交戦中の族同士でも、その日だけは休戦しなきゃいけないって。」
「そんなのあるんだ。……でも、きちんと守るもんなの?」
「まぁ、毎年多少の小競り合いはあるみたいだけどね。一応この地区の暴走族の伝統ある行事だから、そういう"しきたり"みたいなのは不思議と守るみたいよ。」
そういうもんなのか……。
でも、あの葛原がそんなルールを守るような奴だろうか。
反吐が出るくらい、姑息で卑怯な奴だよ?
そんな奴が、狙ってる獲物を前にして何もしないでなんていられる?
それに、あたしのことだって……
あいつの気分次第で、いつバラされるか分からない。
いくら煌龍のスパイは葛原の指示とはいえ、あたしの事をばらさないなんて保証はないんだ。
「ねぇ百合さん。それってあたしも参加出来ないの?」
「え!?
いや、去年は恭のやつ、危険だからってあたしですら参加させてくれなかったよ?茉弘なんて絶対許してくれないんじゃない?」
「あたし、恭にお願いしてみるっ!
春馬!直!!」



