目の前の男は、俺の想像していた総長とはかけ離れているのに、不思議とがっかりはしなかった。
むしろ、興奮冷めやらぬと言った感じ。
だって、やっぱりこの人は総長そのものだ。
他とはまるで違う。
常人でない何かを感じる。
それは、俺が恭に感じたものとどことなく似ていた。
理さんは、恭を真っ直ぐ見ながら、
「随分目が変わったな。」
と言って目を細める。
「恭。俺が何でお前を族に引き込もうとしてたか分かるか?」
「……柚菜に頼まれたんだろ。」
「そうだ。このままお前を一人にはしたくないと柚菜に頼まれた。
まぁ、俺はお前はがどうなろうと知ったこっちゃないんだが、このままじゃお前は沢山の敵を作って自分自身で自滅に追い込むだろう。
そうなったら悲しむのはうちの姫なんでね。」
恭は、「余計なことを……」って目で柚菜さんを見るが、柚菜さんは目を反らし口笛を吹いて、あから様にしらばっくれる。
「まぁでも、もうその心配もなさそうだな。」
理さんは俺を見る。
吸い込まれそうな目に思わず一歩後退る。
「お前は、もう一人じゃないんだろ?」
「…………俺は……」
恭が口を開く。
「俺は、こいつと新しい族を作る。」
「!!!!」
「それで、あるどうしようもない地区を統一したい。」
な、な、な!
何こんな大物の前で宣言してんだよ!?!?
ってか、お前断っただろーが!!
何を……今さら……
そう思うのに、俺は高揚感で心臓が酷く高鳴る。
どうしようもない地区って……この間のあそこか?



