「待てよっ!」
思わず俺は、男の肩に掴みかかって引き止める。
その瞬間。
目の前に火花が散る。
一瞬何が起きたか理解出来ずに、ただよろめく。
「触んじゃねぇよ。」
こいつ……。
殴りやがった!!
一気に頭に血が登り、気が付いた時には相手の胸ぐらに掴みかかってた。
そして、俺の拳が男の左頬に勢いよく炸裂。
その後30分くらい殴り殴られを繰り返した。
それが恭との出会い。
本当、今思うと最悪な出会いだな。
「はぁはぁ……てめぇ……一体何なんだよ?」
男は息を切らしながら、地面に座り込む。
呼吸は荒く、顔を歪ませながら。
「はぁはぁ……俺?俺は梶 太一。お前は?」
「……いや、別に名前なんか聞いてねぇんだけど……」
「……いいからお前も答えろよっ。」
「…………栗山 恭……。」
「そうか!恭か!!宜しくなっ!!」
俺は正直興奮してた。
だって、こんなに清々しい気持ちは初めてだったんだ。
さっきまでの鬱々とした気持ちが嘘のようにスッキリしてる。
代わりに、顔やら体やらの至るところが痛いけど、心は晴れ晴れとしてるんだ。
「恭。俺、こんな風にガチでぶつかり合ったの初めてだわ。
ハハッ。気持ち良いもんだなっ!」
笑いながら、地面に大の字に寝転がる俺を怪訝な顔で見てる恭。