あの女ならあいつの心の傷を、少しずつでも癒してやれるのかもしれない。


あの女の側に居るあいつを見てれば分かる。


あの女も、最初は笑うことも少なくて、何考えてんだか分かんない奴だったけど、最近のあいつは何か違う。


変わったって言うのかな。


雰囲気が柔らかくなったよな。



あいつはあいつなりに、恭を大事に思ってるんだろう。



俺に百合が居るように。


恭にはあの女が居る。


煌龍の奴等も居る。


俺らは、もう一人じゃないんだな。


あの時の俺らには想像出来ねぇよ……。





***




恭との出会いは中2の時。


本っ当クソみたいな出会い。




その日の俺は、鬱憤が溜まってた。


兄貴ばっかり可愛がって、俺の事は見えていない両親。


事ある毎に、"お前はお兄ちゃんに比べて"と罵られる毎日。


うざってぇ。


いっそこの世なんて滅んじまえばいい。


地球爆発しろよ。


そんな事ばかり考えてた。