「恭ちゃんね、昔は今みたいな感じじゃなかったの。」


「?」


「想像つかないかもしれないけど、今みたいな穏やかさなんて欠片もなかったんだ。
口は物凄く悪いし、目付きも鋭くて、喧嘩ばっかりしててね。誰も寄せ付けようとしない子だったの。」


「うそ……。全然想像つきません。
だって、普段の恭は穏やかで……敬語で喋ったりしてるくらいで……。」


「そうだよね。でも、時折見せるでしょ?ブラック恭ちゃん。」


ふと、前に不良グループに襲われた時の事を思い出す。


荒い口調。


いつもより低い声。


鋭い目付き。


黒い雰囲気。


いつもの恭とはまるで違う恭の姿。


そこで、ずっと疑問に思っていた事を柚菜さんにぶつける。


「恭って……もしかして、本当に二重人格とかなんでしょうか?」


「へ?」


柚菜さんは、目を見開いてあたしを見る。


あたしは、眉間に皺を寄せて真剣な眼差しで柚菜さんを見詰める。


「ぷっ!あははははは!!」


それを見た柚菜さんは、急に吹き出して声を上げて笑い出す。



何だか、とてつもなく恥ずかしいんだけど……。


あたし何かおかしな事言ったかな?


真っ赤になっているあたしに、柚菜さんは「ごめんごめん!」と言って涙を拭く。