漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】



親父は常に忙しくしていて、あまり家族と過ごす時間がない人だった。


だけど母さんはいつも、


“お父さんは、お母さんや恭を誰よりも愛しているのよ。

恭が生まれる前から、お父さんはいつだってお母さんを守ってくれた。今だってそう。お母さんや恭に何かあれば、直ぐに飛んで来てくれる。
とってもとっても、強くてカッコイイ人なんだから”


そう言って微笑むんだ。


だから俺は、会えなくたって親父を尊敬していたし、母さんがそんな素振りを一切見せないから、俺も寂しいだなんて思った事がなかった。





だけど、その日は無情にも突然やってくる。



俺が小学生になって間もない時だ。


その日は、休日で母さんとショッピングセンターに買い物に行った。


俺は、帰りに約束だったアイスクリームを買ってもらって、浮かれながら歩いていたんだ。




その時だ。


後ろからナイフを持った男が斬りかかってきたのは。



俺は、辛うじてそれをかわした。


だけど、逃げる俺の後をそいつは追いかけてくる。


それに気付いた母さんは、俺の手を引いて必死に逃げた。


追いかけてくる男を撒いて、俺を連れて物陰に逃げ込んだ母さんは、持っていた携帯電話に震える手で必死に親父の携帯の番号を押したんだ。



だけど、かけてもかけても、なるのはコールばかり。


結局、親父が出る事はなかった。