あの日、線香花火に目を落とす茉弘の姿は今でも鮮明に覚えてる。
酷く儚気で、線香花火の火種ように今にも消えてしまいそうだった。
あの時茉弘は、沢山の事を抱えていたんだよな。
誰にも言えない秘密を胸に抱えながら、
その内容が明るみになるのをずっと恐れながらも、覚悟はしていた。
俺達と一緒には居られなくなる事を…。
今度は、俺の番だ…。
俺だって、いつかこんな日が来る事を、覚悟していたはずじゃないか。
「茉弘…。俺の昔の話、長くなるかもしれませんが、聞いてくれますか?」
じっと彼女の瞳を見詰めると、彼女は一度目を見開いて、何かを覚悟したかのように強く頷いた。
だから俺は、一つ一つ言葉を紡いでいく––––
俺は、斬龍会(ざんりゅうかい)三代目組長、栗山 洸四郎の長男として生まれてきた。
俺の親父に兄弟はなく、俺は待望の後継ぎ候補だったらしい。
そのせいで、俺は小さな時からかなりの英才教育を受けてきた。
勉強に関してもそうだけど、武術や護身術なんかは一通り習わされたかな。
闇の世界で生きていく術を、ただがむしゃらに身に着けていたのがその頃。
俺はまだ幼かったし、それが当たり前だと思っていたから、自分の状況に疑問を抱く事は一度もなかった。



