でも、駄目だ。
今の俺に、そんな事をする資格はない。
茉弘に分からないようにグッと唇を結ぶと、俺の胸に収まっている茉弘からさり気なく距離を取った。
一瞬茉弘の瞳が揺れた気がしたけれど、俺は気付いていないフリをする。
「あ、あのね。途中まで、潤に送ってもらったんだ!どうしても、恭に会いたくて!ほら!最近全然顔を合わせてないでしょ?」
俺は茉弘から視線を逸らす。
「だからって、この真っ暗な中一人で歩いてくるなんて危険だと思わなかったんですか?潤にここまで付いて来てもらうとか方法はあったはず」
あ。
ヤバイな口調がキツくなる。
傷付けたいわけじゃないのに…。
案の定、茉弘の顔色が変わる。
だけど、思っていたものとは違って、茉弘の顔からは笑顔が消えても、俺を強く真っ直ぐ見据えていた。
「ダメだよ。ここは恭が教えてくれた大切な場所だもの。」
彼女のその真っ直ぐな瞳に、心が揺れる自分がいる。
「ねぇ。恭」
だから、距離を取っていたのに…
「ちゃんと話して。あたしの知らない恭の事。
それから、これからのことを」
もう。逃げる事は許されないんだな。
「……分かりました」
彼女を失うかもしれない。
いや、失うだろう。
だけど俺は、全てを話す。
真っ直ぐに俺を見る彼女の瞳に向き合わなければならない時が来たから–––



