「何ここ。まさかこの先に行くつもり?」
思わず怪訝な顔になってしまったのは、小道と言えどまるで補装のされていない獣道が俺達の前に立ちはだかっていたから。
冬だというのにしぶとい草木が酷く生い茂っている。
おまけに真っ暗ときたもんだ。
姉と言えども、女子を一人で歩かせるのには気がひける。
そんな道。
「うん。多分この先に、恭がいるはず」
茉弘がなぜか寂し気な表情で、道の先を見詰めるもんだから、余計に心配になってくる。
「俺もついて行こうか?」
「ううん。いい。この先は、あたしが一人でいかなくちゃ」
…じゃあ、そんな顔するなよ。
俺は、ねぇちゃんにそんな顔して欲しくないんだよ。
「ねぇ茉弘。」
「ん?」
「もう大丈夫だから」
「え?」
不思議そうに目を瞬かせる茉弘を俺は真っ直ぐ見詰めた。
「…もう俺は、いなくならないから。
だから、もう茉弘は一人ぼっちになったりしないよ」
「……」
「だからさ、もう誰かの為じゃなく、自分の為に生きてよ。」
誰かの笑顔の為に自分を犠牲にするんじゃなく、自分が笑顔でいられるように生きて欲しい。
「選択を間違えたっていい。誰かを傷付けてしまうことになったとしてもいいんだよ。
だけど、茉弘は幸せになって。
自分の幸せを一番に考えた選択をして」



