昔、自転車に乗れるようになるのに散々苦労してたっけ。
あまりに怖がるもんだから、親父やお袋がもう乗れなくてもいいじゃないかと、諦めるよう宥めたくらいだ。
だけど、茉弘は諦めなかった。
泥だらけで傷だらけになりながら、恐怖と悔しさで唇を噛み締め、涙を流しながら、
何日も何日も練習し続けた。
結果乗れるようにはなったけど、茉弘が自転車に乗る所なんて、それっきり見なかったな。
昔から負けず嫌いで、こうと決めたらやり通す。
どんなに辛くても諦めることだけはしない。
頑固で真っ直ぐで、
それが俺の姉ちゃん。
俺の知っている数ある人間の中で、一番強い心の持ち主だと思う。
「潤。最近どう?鷹牙の再編は上手くいきそう?」
「まぁ、ぼちぼち…」
そう。
俺はあの後、鷹牙の総長になった。
鷹牙を一から作り直す為だ。
茉弘と恭(と呼べと言われたから呼んでる)には、煌龍に入るよう散々誘われた。
もちろん最初は俺もそうしたいと思っていたんだ。
だけど、鷹牙の中にも悪い奴ばかりじゃなくて、純粋に鷹牙を居場所にしてる奴らもいる。
そういう奴らの中には俺なんかを慕ってくれていた奴もいて、
鷹牙が煌龍に敗れた今、そういう奴らの行く末は真っ暗だ。
どうしても放っておけなかった。



