直が百合に殴られるのも無理はねぇ。


こいつ。マジ空気読めてねぇ。


いや。わざとか?


こいつは前からこのちんちくりんに気があるからな。


恭とこいつが思い合ってると知って、諦めついたのかと思ったが、往生際の悪い奴め…。


だいたい、今のこいつに冗談は通じねぇっつの。


ほら見ろ。


このちんちくりんの不安そうな顔。



「お前こそ何か心当たりねぇのかよ?
あいつの事だ。人があんまりいねぇとこで昼寝でもしてんだろ」


俺がそう言うと、


「人がいなそうなところ…」


と考え込むちんちくりん。


それから何かを思いついたのか、はっとした顔で俺を見ると、


「太一!ありがとうっ!」


そう礼を言って、幹部室から駆け出て行った。



なんだよ。


妙に素直じゃねぇか。



ツンと袖を引っ張られる感覚に気付いて目を向けると、百合が不安そうな顔で俺を見ていた。



「茉弘達…大丈夫なのかな?」


「何が。」


「何がって…。結局あれから二人共、まともに話もしてないんでしょ?」


春馬と直も神妙な面持ちだ。




そう。


俺らはあの日鷹牙を倒し、本当の意味でこの地区のNo. 1になった。