「お前がどう思おうと、あいつがどんなに腐ろうと、お前らが親子っていう事実は消えねぇんだ。
たまには、実家に顔出してやれよ」


そう言って葛葉の父親は、恭の肩を強めに叩くと、側に居た付き人らしき人に、


「バカ息子とその手下の片付けはてめぇらがしてやれ。後は全員解散させろ」


そう命令口調で言うと、付き人が威勢良く返事をして、その部下達に指示を出す。


その部下達に促されるまま、わらわらと人がばらけていく。



あたしは、それをぼうっと見ていた。



「大丈夫?茉弘」



潤が心配そうにあたしにそう聞くけど、上手く頭が回らない。



座り込んだままのあたしに、影が掛かる。


見上げれば、そこには寂しげな笑みを浮かべた恭の姿。



「…帰ったら…茉弘に話さなきゃいけない事があります」


恭は、あたしに手を差し伸べる。



「聞いて…くれますか?」



あたしはきゅっと唇を結び、ゆっくりと頷く。


今にも涙が溢れそうだ。



「帰ろう」


あたしは、震える手で恭のその手をとった。


恭の手は、驚くほど冷たかった。