みんな訝しげな顔でその男を見るも、男の堂々とした態度に何となく何かを感じ取っているようで、
みんな戸惑いながらもゆっくりと恭に目を向けた。
「おぉ。いやがった」
男は、右の口角だけを上げて笑う。
その時、恭の足元に倒れている葛原が、蚊の鳴くような声で発した言葉に、私は思わず耳を疑った。
「おや…じ…」
……え?
今、なんて…?
自分の心臓の音が鼓膜の奥で煩く響き渡る。
葛原の…父親?
つまり……三豪会の……組長?
何でこの人がここに……。
私は、はっとして手で口を覆う。
…ううん。
理由は一つしかないじゃない……
大切な息子のピンチに、手を差し伸べにきたんだ。
恭はそれを分かっているのかいないのか、一向に動く気配がない。
それどころか、驚いた様子さえも見受けられない。
あたしの背中を一筋の冷や汗が伝う。
どうしようっ……
恭が…やられちゃうっ……
男が、恭の目前に迫る。
二人の視線が絡み合う距離にまで来た。
あ–––––
と思った瞬間。
あたしは目を見開いた。
恭が、男に向かって頭を下げていたのだ。
「お久しぶりです。」
「よぉ。でかくなったな。栗山んとこのどら息子が」
––––––––––––––え?



