恭の容赦ない拳が、葛原を捉える。
葛原は、強く壁に打ち付けられると、その場で力無く意識を失った。
……恭?
これで…終わったんだよね?
それなのに、拳を握り締めたままその場に立ち尽くす恭の表情は、なぜだか酷く弱々しく見えて、
今にも消えてしまいそうな気がした。
だからあたしは、彼の名を呼ぶ。
「……恭?」
彼は小さく肩を揺らすと、ゆっくりとあたしを振り返って、
少し寂しそうに微笑んだ。
–––––ギィィー…
金属の重い扉が開く嫌な音。
倉庫内に光が差し込む。
……ヘッドライト?
その光が眩しくて目を細める。
その光の中に現れる黒い影。
その影は、ゆっくりとあたし達の方へと向かってくる。
「あーあ。ひでぇ有様じゃねぇか」
……誰?
聞いたことのない、低くドスの利いた声。
草履を擦って歩く様な音。
近付いて来るほどに、徐々に姿が明らかとなってくる。
恰幅の良い体つき。
グレーの着物に黒の羽織を着た…中年の男性?
よく見ると右の頬に傷痕のようなものが見える。
後ろにガラの悪い男二人を引き連れて、妙な威圧感を放っている。
「てめぇらの頭はどこだ?」
その男は、一階にいる聖也さん達にそんな事を聞く。



