ねぇ、恭。
恭のお母さんが、恭のお父さんを信じていた気持ち、今なら分かる気がするよ。
きっと、本当に守ってくれるかどうかなんて、どうでも良かったの。
そんな理屈でものを考えていたわけじゃない。
ただ無性に、そうだと信じていただけ。
不運に不運が重なって、恭のお父さんはお母さんを助ける事が出来なかったかもしれない。
だけど、
きっとお母さんは、幸せだったはずだよ。
だって、そんな風に心から信じられる人がいる。
ただそれだけで、凄く幸せな事だもの––––
「はっ!あんな身体で、何が出来るっていうんだよ!お姫様が犯されるのをその目で見る為にわざわざ起きたようなもんだろ……!?!?」
葛原の顔がまた更に青くなる。
葛原の視線のその先には、うつ伏せになり、力なく倒れている滝沢の姿。
その横で恭が、指を鳴らしながらそれを見下している。
「なっ…滝沢が…何で…。栗山…お前立ってるのもやっとのはずじゃ…」
「あいにく、ナイフは胴体を掠っただけなんでね。出血はこっち」
恭が、手の平をこちらに向ける。
そこには、深いナイフの傷があり、滴り落ちるほとんどの出血がこの傷からだと分かった。
つまり、あの時恭はナイフの刃を掴んで刃の軌道を逸らしたんだ。
体には刺さってなかった…
良かった…。



