「葛原。お前は大きな勘違いをしてるよ」
相変わらず上階からあたし達を見下す葛原に、
恭はポツリと穏やかに言葉を紡いでいく。
「茉弘が厄病神?悪いけど、それは違う」
恭は、呼吸を整えるように一度瞳を閉じると、
口元に仄かな笑みを浮かべた。
「気が強くて、真っ直ぐで、曲がった事が大嫌いで、自分の事はそっちのけで人の事ばかり。」
…恭?
「だからこそ目が離せなくて、気になって、手を差し伸べてやりたくなる。
うちの姫は、そんな子なんだわ」
恭はゆっくりと目を開けると、撫でるように手すりに手を掛け、葛原の場所まで続く階段を一段一段上っていく。
「今、ここにいる奴らも、俺達の無事を祈って帰りを待ってくれている奴らも、みんなとばっちりだなんて思ってない」
「…く…来るなっ…」
葛原は、滝沢を盾に後ろにおののく。
それでも恭は冷静に続ける。
「みんな、望んで巻き込まれてるんだよ。
彼女の為に何かしたい、と。
その気持ちは個々を強くする。そして、全員の気持ちが一つになる」
恭の金属の上を歩く足音が止まる。
葛原と、滝沢、倒れる潤の前で、その足は止まった。



