「ちっ…栗山の犬に成り下がったな…茉弘…」
葛原のその目には、もう一切の余裕も感じ取れなかった。
瞳は真っ暗な影を宿している。
「お前がその気なら仕方ないよな…」
そう言って葛原がパチンと指を鳴らすと、葛原が立っているすぐ脇のドアがゆっくりと開く。
その中から出て来たのは、無表情であたし達に目を向ける滝沢と……
「潤…」
沢山の傷を負った潤の姿。
傷だらけの顔。
破けた服。
力なく項垂れた頭からは、ポタポタと血が滴っている。
滝沢に押されると、勢いよくその場に倒れ込み、動かない。
「…っ!」
やられたんだ。
葛原や滝沢に、裏切り者としての制裁を受けたに違いない。
あの時、一緒に逃げ出せていれば…。
握り締めた拳に力が籠る。
「ほら。お前らの望み通り、連れて来てやったぞ?」
葛原は、さも楽しそうにひひっと笑う。
「栗山…俺は、お前に初めて同情するよ。
そんなコブ付きの女を姫にしたが為にとんだとばっちりじゃねぇか。
まさか、こんなのを助ける為に勝ち目のねぇ戦いを挑まなきゃならねぇなんてな」
葛原は、地面に突っ伏する潤の頭を踏み付ける。



