「何言ってんだ?ここには俺達しかいねーよ?」


黒いフードの中のリーダーらしい男が、わざとらしく「なぁ?」と投げかけると、他の奴らもわざとらしくクスクスと笑いながら頷く。


「白々しいっ!さっさと出せっつってんだよっ!!」


「太一」


今にも相手に飛び込んで行きそうな太一を、恭が冷静に制止する。


「調べはついているんです。もう一度言います。余計な体力は使いたくない。そこを通してもらえませんか?」


恭がただ冷静にフードの男を見据えているだけなのに、男の顔は緊張感に染まっていく。


「…やだと言ったら?」


コンッ!と一度音を立てて鳴り止んだ金属音。


辺りはシーンと静まり返った。



あ。


この感覚。



恭と一緒にいるようになって分かってきた、


恭の周りを取り巻く空気が変わる、この瞬間。


「“やだ”?」


恭は、額に手を当てクスクスと笑う。


その乾いた笑いが止まると、そっとその手を下ろした恭の瞳は、鋭い光を放っていた。



「ほざけ。てめぇらにその選択肢はねぇよ」



低く、冷たく響く恭の声。


あぁ…これは…


「完全にスイッチ入ったわね。ただでさえ、イラついてんのに…早くどいておけばいいものを」


あたしの隣で聖也さんが溜息をつく。