「ここはね、元々風雅の倉庫だったんだよ」
そう言って、コーヒーの注がれたカップをあたしに差し出した。
「え!?」
「今は別の所に移転して、ここは理君のお店に改築したの。
この会議室は元々幹部室として使ってたんだけど、改築する時にどうしても残しておきたくて、今では理君が承諾した人だけが好き好きに使ったりしてるの」
そっか…。
だから、妙に使い勝手がいいんだ。
差し出されたコーヒーカップを受け取りながら、あたしは辺りを見回した。
よく見れば、ホワイトボードは使い古された感じだし、置いてあるソファーやテーブルなんかも年季が入っている。
「昔は、もっと生活感があったんだけどね。理君が他の子達が出入りしやすいように、色々片付けちゃったんだ」
「前はベッドやなんかも置いてあったんだよ」と言って、柚菜さんは懐かしそうに目を細めた。
柚菜さんと理さんにとって、ここはどんな場所だったんだろう?
この二人が風雅の要だったのは、何年も前の話で、
今では結婚をして、柚菜さんのお腹には新しい命が宿っている。
それでも、この二人にとっては今でも残しておきたいほどに、ここは大切な場所だったんだ。
あたしは、あっという間にサンドイッチを食べ終わって、コーヒーを啜っている恭に目を向ける。



