漆黒の闇に、偽りの華を②【完結】



失いたくない。


もう、誰も失いたくない。


大切な人がいなくなるのは、もう嫌だよ。


たった一人のあたしの家族なの。


生まれる前から一緒に居て、生まれてからもいつも一緒だった。


お父さんお母さんがいなくなっても、潤がいたから生きてこられたんだよ。


潤のいない世界なんて……


あたしは……



──────トン



肩に優しい衝撃が走って、あたしの意識は元の場所まで引き戻される。


振り返るとそこには、濡れた髪の毛に憂いを帯びた表情の恭が立っていて、振り返ったあたしの頬に優しく触れた。


あたしは、恭の顔を見たとたん、酷くそれにすがりたくなって、


恭の胸に顔を埋めて、恭の香りのするTシャツをキュッと握った。


そうすると、恭もあたしに腕を回して、優しく抱き締めてくれる。



恭ってあたしの心が読めるのかな。


いつも、あたしがして欲しい事が分かっているように動いてくれる。



ポタポタと恭の髪の毛から滴り落ちる水滴が、心地良い。