「だいたいさ、俺の事だって信用出来んの?全部嘘かも知れないよ?兄弟ってことすら……」
「いや?間違いなく兄弟だよ」
「は?」
「すげぇ似てるじゃん」
「?……昔から顔はあんまり似てない方なんだけど……」
こいつ目まで悪いのか?
眼鏡はダテか?
「顔じゃなくてな。」
そう言って意味深に笑う栗山は、俺の向こう側に茉弘を見ているようだった。
「あとさ、言っとくけど」
「?」
「俺はさ、茉弘をみすみす逃がす気はないんだわ」
栗山は立ち上がって、俺に背を向ける。
「茉弘が俺をどう思ってるかなんて知らない。
俺にとって茉弘はなくてはならない存在。
それだけわかってりゃ、茉弘を側に置くには、十分な理由だろ?」
意外に自己中な奴なんだな。
そんな事を思いながらも、この男の茉弘への思いはきっと、何にも揺さぶられる事はないんだろう。