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「ありがとうございました。じゃあ、俺はこれで」
そう。
あの大暴走の夜、俺は初めて栗山 恭に会った。
将生さんに聞いていた話では、もっと厳つい感じの奴を想像していたのに、俺の前に現れたそいつは俺の想像していたイメージから大きくかけ離れていた。
背は俺と変わらないくらい高いけど、体つきは思っていたよりずっと普通で、
かつて一人であの誰も手の付けようがなかった地区を、一人で統率してのけた伝説の男とは、とても思えなかった。
体つきもそうだけど、見るからに優男だし。
喧嘩なんてしたことありません。てくらいに穏やかなオーラを纏っている。
強いて言えば、さっき茉弘を俺から守るように自分の胸に引き寄せた時に見せた、俺を威圧するような表情。
それだけは、肌に触れる空気が痺れるくらいに迫力のあるものだった。
でも、その警戒心ですら茉弘の言葉ですぐに解かれ、俺に丁寧に道案内までしてくれるもんだから……
拍子抜け。
その言葉が一番正しいだろう。



