あたしは、自分の抱えた膝に向けて、小さな溜め息をつく。


溜め息が触れた部分が、じんわりと温かい。


「潤……ごめんね」


潤はまたゆっくりと目を開けて、あたしに目を向ける。


「何が?」


「……うん。何か、助けられなかった上に、こんな事になっちゃってさ……」


潤は、あたしから目線を外して空を仰ぐ。


「俺、最初から助けてなんて頼んでないし。将生さんに反抗したのも、俺が勝手にした事でしょ。何で茉弘が謝るのか分からない」


「……うん……」



そうなんだけど……。



潤は、このままでいいの?


このままあたしとは別々の道に進んで、葛原なんかと過ごしていって、三豪会の組員なんかになって……


もしも、あたしが助けたりしなければ、その道を生きていくつもりなんでしょ?




……でも、あたしは例え潤がその道を望んだとしても、素直に送り出すことなんて出来ないよ。


例えあなたが必要ないと言おうと、
唯一の家族として、姉として、


あなたの笑顔を取り戻すまで、戦い続ける義務がある。



だから何をしてでも、どんな手を使ってでも、潤を取り戻してみせると誓った。


それなのに……



あたしは、恭を裏切れなかった。