「……はぁ」


──パサッ


潤に縛られていた手と足を解放して貰ったお陰で、漸くかじかむ手を擦り合わせて温めていると、

ふわりとダウン生地のジャケットが肩に掛けられる。


驚いて振り返ると、潤いつもの落ち着いた態度で、


「そんな薄着で寒いんでしょ?それ着ときなよ」


と言って、あたしの肩に掛かったダウンを指差した。


「でも、潤は……」


「俺は中も厚着だから。
いーから着ててよ。見てるこっちが寒いから」


そう言って、壁に寄りかかって目を瞑る潤に、


「ありがと……」


とだけ言って、あたしはそのダウンに袖を通した。




あれからどれくらい時間がたったのだろう?


もう何時間もここにいるような……はたまたまだ数十分しか経っていないような、


この静けさと闇が、時間感覚を狂わせる。



これからどうしたものだろう?



葛原が出て行ってすぐに、潤に縛られた手と足を解放してもらうと、あたしは脱走を試みた。


でも、それはすぐに潤によって阻まれた。


『この倉庫を出られたとしても、倉庫の外では鷹牙の見張りがウジャウジャいる。すぐに、捕まってここに戻されるだけだよ。今は余計な動きはしない方がいいから』