「いい加減、蛍ちゃんを出せよ!」
「そう言われましても…」
泣きそうな案内係を見てさすがに出ざるを得なくなったのはさっきまでホットケーキを食べていた佐藤先生。
「君たち。ちょっと待っていなさい」
そう言い残して裏へと回り、しばらくしてから蛍を連れて来た。
あ、やっぱりいるんじゃないか。
ちゃんと準備もしてる。
それなのに何で出てなかったんだろう。
蛍が指名制度はないんです、って説明すれば早い話だっただろうに。
「うぉー!可愛いー!!蛍ちゃーん!!」
俺の疑問なんか他所に、周囲からはまるでアイドルが出てきたかのような割れんばかりの声援が飛び交い始めた。
これにはさすがの蛍も驚きを隠せないようで笑顔がぎこちない。
「可愛いな。青柳さん。照れてる」
照れてる?
いや、違う。
あれは不安なんだ。
ウィッグと思われる長い黒髪をポニーテールにし、赤いハチマキをつけ、少し濃いめの化粧をしているせいで美しさの方が際立つけど、あの顔には不安しかない。


