「星那、いる?」



ノックをして、接待室の扉を開ける。

ソファーで小さく体操座りしながら携帯ゲーム機でゲームをしている星那が視界に入った。



「……なに」



ゲーム機に視線を向けたまま、素っ気なく返ってくる返事。



「星那、甘いもの好き?」

「…………」



長い沈黙が落ちたあと、迷ったように視線をさまよわせて星那は口を開いた。



「……すき」



ゲームをしている手を止め、警戒しているような不安そうな瞳にあたしを映す。

星那があたしを見てくれたことが嬉しくて、自然と笑みがこぼれる。



「よかったぁ。 ほら、明日バレンタインでしょ? お菓子、一緒に作らない?」

「ばれんた……?」

「うん、バレンタイン。お菓子を仲良しの人に渡す日だよ」



バレンタインを知らなかったのか、不思議そうな表情をしている星那がかわいらしくて、ふふっと笑いながら言うと、星那は顔を真っ赤にした。