「だから私もそちらにつけと?」
 エルロスに従い、スカーレットも立ち上がった。ジェイドはスカーレットを守るように立ち上がった。銃を構え、いつでも撃てるようにした。
「一つ訂正させてもらいますが、私はレイチェル王女ではありません。スカーレット・ルーフェン。ラスール帝国軍第一部隊所属」
「え、でも」
 スカーレットの言葉にエルロスは戸惑った。エルロスの記憶にあるレイチェルの姿は成長こそしているがスカーレットと酷似している。なのに、別人。おまけに、ラスール帝国の軍人。
 エルロスは訳が分からなくなった。其れは他の人も同様で、ざわざわと不快な波紋が波を立て始める。
「後さ、イカルガをラスールから解放すると言ってたけど、中尉はイカルガをラスールから解放した次は、エレジアの属国にでもするつもりですか?」
「そんなわけないじゃないですか!」
「そちらに其のつもりがなくても、向こうの真意までは分かりませんよね」
「其れは、そうですが・・・・・」
「リベレイションは戦争を亡くす為に動いている。其れが仮に真実だとしても、ruinなんて核兵器を投射するような連中を信じられるわけがない」
「ラスールはイカルガ王国を属国にし、其の国民を奴隷のように扱うような国です」
「だからruinを落とされても仕方がないと?」
「はい」
エルロスは断言した。
詭弁にもならない。
結局は自分を中心にしか考えられない。自分にとって、都合がいいのなら、どれ程の血が流れようと、どれ程の命が奪われようとも構わない。彼らは其れさえも否定し、自分達の行為を正当化するだろう。今のように。
スカーレットは廊下に転がる無数の死体を思い出した。スカーレットは笑いながら人を殺し、『弱者は強者に淘汰される。其れが世界の摂理』だと言ったレレナを思い出した。
そして、彼女は思うのだ。

・・・・・・嗚呼、人の命がまるでゴミのようだ