免許取り立ての、若葉マーク。

亀なみのトロトロ運転で後続車に迷惑をかけつつ、やっとの事で、ホテル・ロイヤルの地下駐車場に車を滑りこませた。

平日で、駐車スペースが空いていることに感謝しながら、コンソールのデジタル時計に素早く視線を走らせる。

―11:55―

やった、ギリギリセーフ!

私は、ハンドバックをひっつかみ、車を飛び出した。

カンカンカンカン――

人気のない薄暗い駐車場にパンプスの足音を忙しなく響かせて、エレベーター前に猛ダッシュ。

ああ、もう。

レストランに行く前にトイレに寄って、メイクを直したかったけど、もうそんな時間はない。

レストランは、最上階の展望ルーム。

私は、エレベーターのドアの前で腕時計とにらめっこをしながら、エレベーターが下りてくるのを、今か今かと待ちかまえていた。