ぼくのことだけ見てなよ

二人を置いて、那津と二人で歩き出した。

「あれ。及川に勉強教えるのは、ぼくでしょ?」
「知らない」
「なに、怒ってるの?抱きしめたこと、そんなにイヤだったの?」
「はぁ…?」

美島の、あまりにも腹の立つ発言に、言葉を失い立ち止まり振り返った。

「あー、それとも」

そんなわたしの前にグンッと詰め寄ってきた美島は、顔を近付けるとニヤリ笑った。

「キス、してほしかったとか?」
「なっ…!!」

そこからは、ホント一瞬だった。バシンッ!と、音がして「いってぇ…」と聞こえたヤツの声。

手のひらがジンジンと痛くて、その時に〝あぁ、わたし殴ったんだ〟と気付いた。

「今のは、楓が悪い」
「っ、でもいきなり殴ることないでしょ」
「み、美島くんっ!」

ボォ〜っとしてるわたしをよそに、松井と美島が話してる中、那津が美島に向けて叫ぶように呼んだ。