綺麗な顔立ちをしているが、細身で、ちょっとインテリ風。

 本来なら、苦手なタイプだ。

「志貴島です」
と克己に言われた通り、笑顔で頭を下げた。

 智久は頷いたが、そのまま沈黙が流れる。

「じゃあ、失礼します」
と克己が仕切り、連れ出された。

 ドアを閉めた克己は振り返り、

「お前は、此処はないな」
と言う。

「そうですねー。
 専務につくというのも、気疲れしそうですし。

 私も嫌です」

「……選り好みできる立場か、新入社員」

「ところで、今、後ろで控えてた美女は誰ですか」

「ああ、あれは、平山桜(ひらやま さくら)だ。

 って、お前、同じ課だろうが」

「あ〜、平山さん。
 確か、ずっと出張されてたので」

 そう言いながら、あれが、平山桜か、と思っていた。

 姉の日記によく名前が出ていた。

 同期の平山桜。

 想像していたより、もっと美人だ。

 第二秘書課のエース。

 エースって言っても……第二だから、顔がかな、とちょっと思ってしまった。