禁断のプロポーズ

「そんなつもりなかったと思いますが」

「じゃあ、なんで疑われたまま、辞めたのよっ。

 言えばよかったじゃない、私だってっ。

 なのに、日記にも書いてないっ」

「おねえちゃんの日記は嘘日記ですからね。

 後で、誰に見られてもいいように。

 本当に楽しかったことも、辛かったことも、なにも書いてない」

 智久さんのことも、あの人のことも。

「まるで、それを読み返した自分自身さえ騙すみたいに、現実を隠した。

 でも、おねえちゃんだって、何処かになにか残したくて、生きてた証も思い出も残したくて。

 大事な場所に楽しかった思い出を埋めに行った」

 あのイヤリング。

 入社してすぐ、まだ、智久とも出会ったばかりで、ただただ楽しかった頃に、賞品でもらったのだろう。

 智久の部屋にひとつと、気の置けない仲間だった夏目の部屋にひとつ、置いて行ったのだ。

「おねえちゃんは誰かに狙われているのを知っていた。

 でも、貴女だとは思ってなかった。

 別に狙われる事情があったから」

 彼女は、まず、殺し屋の関係を疑ったに違いない。

「だから、油断して、貴女に突き落とされたんです」